白い清潔感のある部屋には不釣り合いな卑猥な音が響き渡る。荒い息の二匹の獣が、絡み合いもつれあう。
「ング…ッぅうぅ゛…」
義孝はもう限界だった。しごかれるたび限界を超えた快楽が身体中に駆け巡る。そしてついに義孝は―――陥落した。
「んぶ…っぅ、んっ…〜〜〜ッ」
達しながら、義孝はなんて惨めなのだろうと思った。だがそんな羞恥は、すぐに強い快楽に打ち消された。背中を反らし、透の綺麗な足にボタボタと白濁をまき散らす。それはあまりに非現実で倒錯的だった。
弾けた欲望を感じながら、義孝は身を震わせる。快感の余韻を感じながら義孝はビクビクと身体を痙攣させる。
頭が真っ白になる…―――。
「んがぅっぅ」
義孝が射精をした余韻に浸っていると、やっとずっと口腔を埋めつくしていた透の性器がずるりと抜かれた。そのときの何とも言えない説明できないぐらいの不快感に義孝はえずきそうになる。義孝は実際に我慢できずに、胃酸を吐き出すように咳を繰り返す。
解放され、義孝はやっとうまく呼吸ができた。はぁ、はぁ、はぁ…大きく息を吐いては吸うを何度も繰り返す。
大きく咳を繰り返し、喉に張り付いた感覚をなんとか取ろうとする。
「クソ…ッ、無茶苦茶にしやがって…ッ」
義孝は解放されたことによって、いつもの彼に戻っていた。だけれど涙に濡れた顔で、頬には涎がべとべとについていて、下半身に何も身に着けられていない状態で睨まれても説得力も迫力もでない。
口を押え、大きく息をする義孝に、透は蕩けた顔をする。その蕩け切った瞳にドキッとしてしまう。
「足でイっちゃいましたね…」
「〜〜〜〜〜ッ」
カッと顔が赤くなる。透のからかう視線に、目を逸らす。逸らした視線の先にあった、自分の精液に濡れた透の綺麗な足があって思わず目を瞑る。恥ずかしい。消えてしまいたい。義孝に羞恥心が湧き上がる。
「それはあんたが勝手に…」
もごもごと口ごもってしまうのは、気恥ずかしさがあるから。奉仕を中断しまだ勃起したままの透の性器に気を取られてしまっているからだ。
「…積極的な義孝さんとてもよかったです」
「っ」
頬を慈しむように撫でられ、体温が上昇した。
そうだ俺は―――。透の性器を自分から舐め、喉奥まで入れられ、足でいじられて達してしまった―――それを透にじっくりと見られてしまった―――。そう自分の今までの自分を思い出すと、恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「ば、馬鹿じゃねぇの……、」
「…」
くすくすと笑う透を義孝は憎まれ口を叩きまた睨んでしまう。自分自身のこめかみがぴくぴくと動いているのが分かる。
「えぇ…馬鹿なんですよ…。義孝さんに馬鹿になっているんです」
甘い声と言葉に義孝はさらに顔を赤くする。三十路近い男がこんなに頬を赤らめて馬鹿みたいだと義孝は自分を諫(いさ)める。
「ッ」
はぁっ―――透の熱い息が顔にかかる。義孝の肩に衝撃が走った。瞬間、ベットの上に押し倒されていると気が付いた。白い天井をバックに息を荒げる透の顔は欲望に満ちた雄の顔をしていた。そのギラついた瞳にまるでか弱い少女のような心細い気持ちになる。
襲われる―――…いや実際に襲われているが、そんな危機感がやってくる。
ギシ…、とベットのスプリングが鳴った。透の丸出しの勃起した性器が義孝の太ももにあたる。
「や、やめろ…ッ、あんたそれどうすんだよ…」
義孝の≪それ≫は、透の性器だった。勃起した透の性器はやはり一般的なモノよりも大きすぎる。あれが自分の口に入っていたのかと思うと今更ながら血の気が引いた。そりゃ顎が外れそうになるわ―――そんな呑気なことを考えている場合じゃないかもしれない。
怯えた顔をした義孝に、透は興奮気味に話す。それは義孝にとっては死刑宣告のようだった。
「義孝さんの中にいれるんです」
さらりと透は言った。
「はぁ?!」
こんなの入るわけないだろ?!と、義孝は目を剥いた。
赤ん坊の手首より大きい透のそれは長いし、舐めていて分かったが相当硬い。しかも長持ちだ。所謂【絶倫】ってやつなのではないのか? 今も透の性器は勃起した状態で、硬度を保ったままだ。
あんなの自分の中に入るなんて冗談じゃないと、義孝は今までいい雰囲気なんて忘れて、本当に生命の危機を感じ、透の腕の中で逃げようと暴れる。だが透は義孝の強い抵抗をしっかりと受け止めて、がっちりと義孝は逃がさないようにする。
「じゃあ義孝さんが、僕のなかに入れますか?」
「えっ? い、いや…それはちょっと…」
そう言われると、義孝は怖気づいてしまう。俺のモノを突っ込んで喘いでる伊勢さんなんて想像できない…―――。つい想像してしまったが、想像が出来なさ過ぎてついモザイクがかかってしまう。
「…じゃあ僕が入れていいですよね?」
楽しそうに事を進めようとする透に義孝は待ったの声を上げた。
「えっ? …っ、いやいや、それとこれとは話が違うじゃねぇか! 普通に考えて無理だろ! こんなデカいちんこ入るわけねぇだろが!」
ケツが裂けるに決まっている!と逃げる義孝に、透は美しすぎる笑みを浮かべて口を動かした。
「これから慣らしていけばいいんですよ。…僕のモノが全部入るまで、じっくりと」
甘ったるい声と言葉だが、その二つの義孝を見つめる瞳は本気だった。本当に宣言通りに≪全部入るまでじっくりと慣らす≫のだろう。義孝はそれを感じ、喉がひゅうっと鳴る。ずっと前から絶体絶命だったが、これは本当に絶体絶命なのではないか?
義孝は考えれば考えるほど、頭が痛くなる。
「…無理だ…勘弁してくれ…」
不敵な笑みを浮かべる透に義孝は勘弁してくれと白旗をあげた。だが義孝が懇願の表情で降参しても透が許してくれるわけもなく。
「ダメですよ。義孝さんばっかりイっちゃって…。僕ももっといっぱい義孝さんを感じたいんです」
甘言を吐いて、突然義孝の前に現れた侵略者は蕩けた狂った綺麗すぎる笑みを見せた。
義孝にはまだ貞操が奪われる覚悟は出来ていなかった。もう昔、強制的に奪われているが、そんなバカみたいな程大きい透のペニスを見れば義孝だけでなくどんな客も受け入れてきた娼婦でも怯えるだろう。
あれから義孝は四つん這いにさせられ、≪透を受け入れるための準備≫をさせられていた。
四つん這いになるのは久しぶりだった。昔月村たちにされた屈辱的な光景を思い出して、身体が勝手に震えてしまう。
―――ミジメだぁ、犬みたい―――
「怖いですか?」
義孝の脳内に浮かんだ悪魔の声を消したのは、この状況にさせた張本人である透の優しい声だった。義孝は何故かほっとしながら、透に対して怒気を含ませた。
「そりゃぁ怖いだろ」
義孝は後ろを振り向いて、睨む。眼鏡越しの彼は、自信に溢れさせていた。
「大丈夫ですよ。義孝さんが気持ちよくなるための準備なんですから」
そんな睦言を低い甘い声で囁かれたら義孝は顔を真っ赤にさせるしかない。
「…っ、生意気いいやがって…」
ギシ…、と白いベットが揺れる。それは義孝の心のようだった。
「冷たくなると思いますが我慢してくださいね」
透はどこからか持ってきた、透明なボトルを持って義孝に笑いかける。
透のその言葉で義孝の心の準備が出来ないまま、透の≪義孝を気持ちよくさせる準備≫が始まったのだった―――。
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